『ハジメとケンとセツ』誕生のきっかけは、競合コンペだった。「一建設の社名認知度を向上させたい」とのオーダーを受け、電通東日本の担当チームは一建設という社名に着目。一建設=はじめけんせつ=ハジメ・ケン・セツ。社名を分解すると3人の名前になることを発見し、双子の兄弟ハジメとケン、幼馴染のセツの三角関係を描く、1話5秒の連続ドラマ形式のWeb Movieを企画。全編を「ハジメ!」「ケン!」「セツ!」のセリフだけで構成し、社名をバズワードとして拡散させることを狙った。この提案は一建設からも高く評価され、見事競合コンペに勝利した。
ハジメとケンとセツ
たった3つのセリフだけで繰り広げられる、ハートフルスピードドラマ―――『ハジメとケンとセツ』は、そんなキャッチコピーからはじまるWeb Movieだ。全編通して、セリフは「ハジメ!」「ケン!」「セツ!」のみ。そして漫画を手がけたのは世界的サッカー漫画『キャプテン翼』の作者である高橋陽一先生と戸田邦和先生。2022年の公開と共にSNSを中心に話題を呼び、国内外さまざまな広告賞も受賞している。
社名を、バズワードに!
高橋陽一だからこそ、
世界最大のサッカーの祭典!
社名をバズワードにする。そのためには、企画の拡散力をより高めることがカギとなる。そこでチームが目をつけたのが、2022年11月に開催される世界最大のサッカーの祭典の中継枠だった。日本中の注目を集める試合という、旬の話題にマッチしたWeb Movieにすることで、サッカーファンを中心に拡散させる。それを視野に、世界中から愛されるサッカーマンガ『キャプテン翼』の作者である、高橋陽一先生・戸田邦和先生に描き下ろしを依頼。「TSUBASA AIR」という名の航空会社を登場させるなど、ファンをくすぐるネタを漫画の中にちりばめた。
メディアにも、
クリエーティブを。
もうひとつ、チームが工夫したのがメディアの選定だった。サッカーの中継枠以外にも、企画の拡散力を高められるメディアはないか?その観点で選ばれたアイデアのひとつが、書店で文庫本を買った際に巻いてもらえる、ブックカバー広告だ。コミック風のデザインにすることで、あたかも「え、高橋先生の新作漫画!?」と思わせる仕掛けにした。ほかにもシネアド(映画の上映前に流れる広告)や渋谷スクランブル交差点の6面ビジョン広告など、Webにとらわれず、メディア展開をプランニング。あの手この手で、企画の拡散・話題化を狙った。
多数の広告賞を受賞。そしてシリーズ化へ。
こうして『ハジメとケンとセツ』は、2022年11月に公開。SNSを中心に話題を呼んだ。サッカーファンの間でも盛り上がったが、特に反響が高かったのはシネアドだ。観客からは、「シアターがザワついた」「場内が爆笑の渦」「正直…(映画)本編より良かった」といった声が寄せられた。結果、一建設の社名認知度は目標としていた数値を達成。さらに、そのクリエーティブは業界から高く評価され、アジアを代表する広告賞のひとつであるADFESTやギャラクシー賞など、さまざまなアワードを受賞した。こうした実績が評価につながり、一建設は続編の制作を決定。2年目はWeb Movieに加え、新聞広告やトレインジャックなども展開。さらにテレビ局制作での実写ドラマ化など、『ハジメとケンとセツ』の世界は、ますますの広がりを見せている。
※事例紹介として記事を作成しているため、クライアント名の敬称を省略させていただいております。